心臓外科のご案内

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心臓外科は心臓および心臓近辺の大血管の疾患を外科治療で治す診療科です。具体的な疾患は冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞、心筋梗塞合併症など)、心臓弁膜症、不整脈、胸部大動脈瘤などです。 当院の診断で特徴的なことは最新の64列マルチスライスCTが導入され、従来血管造影検査が必要であったものが普通のCT検査だけで冠動脈や大血管の病変が診断できるので、患者さんの負担を軽減することが可能になりました。 手術に関しては昨今医療の質が厳しく問われていますが、国内・海外での豊富な臨床経験を基に患者さん、紹介様にご満足いただけるような体に優しい低侵襲手術や質の高い(術後の患者さんのqualityが高い)手術を目指しています。

虚血性心疾患

オフポンプ冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術では、より低侵襲化を目指した人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術 (オフポンプCABG)を行っています。人工心肺を用いない為、術後早期回復、術後合併症頻度の低下、早期退院、無輸血手術などが期待できます。特に75歳以上の高齢者、脳、肺、肝、腎障害 などを合併したhigh riskな患者さんに有用であると考えられます。これにより術後の合併症もごくわずかになり、術後10日から2週間の早期退院していただくことも可能になりまた。

動脈グラフトの多用

バイパスグラフト材料として以前は大伏在静脈が良く使われていましたが長期開存性に問題があり、長期開存が期待できる両側内胸動脈、両側橈骨動脈、右胃大網動脈などを多用しています。これにより長期生存率の改善、狭心症再発率の減少が期待できます。以下にオフポンプCABGで動脈グラフトを使用した症例の術後造影を示します。

動脈クラフトの多様

内視鏡補助下の手術

手術のさらなる低侵襲化を目指して、内胸動脈や橈骨動脈、下肢静脈などの採取に内視鏡を用いています。これにより傷が小さくなるだけでなく、創部の血腫や感染などの合併症も減り術後の回復がより早くなります。将来的には適応症例では内視鏡のみによる冠動脈バイパス手術を目指しています。以下に橈骨動脈採取で内視鏡を用いた患者さんの術後創部を示します。

内視鏡下の手術

虚血性心筋症(低心機能例)

以前は心移植しか方法はないといわれていましたが、合併する僧帽弁逆流に対する弁輪縫縮術や左室形成術を加えることにより生存率の向上やQOLの改善が得られることが分かってきました。わたしたちも積極的にこの治療を行っています。さらに最重症の場合、心臓移植認定施設である大阪大学と協力して心筋再生医療、埋め込み型左室補助装置(LVAD)や心臓移植などの最先端治療も考慮します

心臓弁膜症と不整脈

弁膜症に対する手術法は、人工弁による弁置換術と弁修復術があります。新世代の人工弁は機能・耐久性とも格段に向上していますが、ワーファリンを服用しなくてはならずそれによる出血等の副作用もあります。一方、弁修復術は自分の弁温存を図るものでありワーファリン服用の必要がありません。当院では弁修復術、特に僧帽弁に対する修復術を積極的に行っています。また僧帽弁疾患には脳梗塞を起こしやすい心房細動を合併することが多いのですが、それを洞調律に戻すメイズ手術も積極的に行っています。これらにより心房細動を伴う僧帽弁閉鎖不全症の患者さんに対し、修復術+メイズ手術によって自己弁温存+洞調律となり術後の心機能、QOL両面で格段に向上することが期待されます。以下僧帽弁修復術+メイズ手術後の心電図を示します。

心房細動
心房細動

洞調律
洞調律

院内他科との協力

手術後は集中治療室(ICU)で経過観察させていただきますが、多くの病院では心臓外科医がそのまま術後管理を受け持っていることが普通です。当院ではICUに専属医が常駐しており、私達と緊密に連携しながら術後の経過を診させていただいています。  また心筋梗塞後や心臓手術後の回復に心臓リハビリテーションが重要であるといわれています。当院では心臓リハビリテーションの施設基準を取得しており、手術後早期からリハビリテーションを開始し早期社会復帰への補助をしています。  他に院内にソーシャルワーカーがおり医療費に関するご相談や退院後の諸問題など懇切丁寧に対応させていただいています。  このように院内各部署と協力して、心臓外科の技術的な治療はもちろん総合的に最高の医療サービスを提供させていただくよう努力しています。

情報開示とセカンドオピニオン

手術が必要で外来を受診された時に手術の必要性、手術方法、危険性、また一番知りたいと思われるわれわれの経験など包み隠さずオープンにし、十分に話し合って納得していただいた上で手術を受けていただきたいと考えています。ご希望であれば手術のビデオを手術後にお渡しいたします。 セカンドオピニオンも受け付けています。どうぞお気軽にご相談下さい


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■ -2007年

2007年 KKR札幌医療センター心臓・血管外科 Annual Report


手術統計 2007年
全手術症例数 219例
Major Cardio-Vascular Surgery
(所謂開心術+OPCAB+胸腹部以上のEVAR)
92例(EVAR 9)
虚血性心疾患 36例
単独冠動脈バイパス術:31例
心筋梗塞合併症:5例
心臓弁膜症 27例
メイズ手術(全て重複):16例
胸部大動脈瘤 28例(EVAR 9)
真性:15例
解離性:13例
腹部大動脈瘤 36例(EVAR 19)
16例(うち4例 EVAR)
クック社製ZENITH 13
ゴアテックス社製EXCLUDER 5
Home made 1
末梢血管 42例(IVR 20)
AV shunt 38例(IVR 14)
その他 11例
*EVAR=経皮的ステントグラフト内挿術

  循環器センター及び心臓・血管外科開設後2年目でしたが、合計219例の手術をさせていただきました。 その内、開心術+OPCAB+胸腹部以上のステントグラフト治療(EVAR)が92例(EVAR 9例)でした。内訳は虚血性心疾患36例、 心臓弁膜症27例、胸部大動脈瘤 28例で虚血性心疾患ではやはりDESの影響か単独冠動脈バイパス術が減少しましたが、 弁膜症及び胸部大動脈瘤は増加しました。腹部大動脈瘤も36例と増加していますが、大動脈瘤(胸部+腹部)の手術のうち28例は 経皮的ステントグラフト内挿術でした。特に腹部では企業性ステントグラフトが使用可能になり、クック社製ZENITH 13例、 ゴアテックス社製Excluder 5例を施行しいずれも初期成功をおさめました。末梢動脈疾患(急性、慢性動脈閉塞等)も42例と増加しましたが、 その内20例は血管内治療(PTA+/-STENT)でした。またFontaine IVの3例には膝下又は足関節レベルのdistal bypass(in situ SVG bypass)を 行い良好な結果を得ました。

心臓血管外科  部長(心臓外科担当)
福田 宏嗣(ふくだ ひろつぐ)

略歴

資格

専門分野


心臓血管外科  医長(心臓外科担当)
大畑 俊裕(おおはたとしひろ)

略歴

専門医

専門分野


心臓血管外科 医長
上田 秀樹(うえだ ひでき)
血管外科に記載


心臓・血管外科  後期研修医
堀 貴行(ほり たかゆき)

略歴

 
午前 手術 大畑 俊裕 手術 大畑 俊裕 手術
午後 手術   手術 第2,4
福田 宏嗣
手術

高齢者の心臓・大血管手術 (心臓外科・血管外科 福田宏嗣)

  日本は平均寿命が男79歳、女85歳と世界一の長寿国で、さらに80歳の平均余命も男8.4年、 女11.2年となっており世界に例を見ないスピードで高齢化社会を迎えつつあります。この現状と手術成績の向上により80歳以上は当然、 90歳以上の超高齢者にも手術が行われるようになって来ています。最近当院でも90歳以上の緊急心臓・大血管手術を経験したので簡単に ご報告させていただきます。

症例1:93歳(大正3年6月18日生まれ)、女性
診断:腹部大動脈瘤 破裂、出血性ショック
現病歴:他院で腹部大動脈瘤を指摘されたが超高齢であり手術は勧められなかった。 2007年7月5日午後8時ごろ、自宅寝室でうなっている所を家人が発見。CT上、8cm大の腹部大動脈瘤と後腹膜腔への破裂像を認め当院へ 救急搬送。前医出発時より血圧60台のショック状態であった。来院時、意識レベルはJCS 10-20。救急隊ごと手術室へ搬送し、緊急手術開始。
手術手技:Y字型人工血管置換術、手術時間;3時間53分
手術後経過:呼吸状態安定しないため気管切開施行。術後17日目集中治療室退室。21日目人工呼吸器から離脱。このころから経口摂取を開始し徐々にリハビリを開始。経口摂取可能、自立歩行可能になり術後2ヶ月社会的理由で療養型病院へ転院。

症例2:92歳(大正4年3月9日生まれ)、女性
診断:重症大動脈弁狭窄症、うっ血性心不全、慢性腎不全、失神発作
現病歴:失神発作と息切れがするとの主訴で2006年11月に他院へ入院。そこで重症大動脈弁狭窄症、うっ血性心不全、それによる失神発作と診断。 高齢等により手術は勧められず、内科的治療で改善し退院(2006年12月14日)。 以後、家庭医で経過観察されていたが2007年6月28日再度失神発作を認め当院へ搬送された。入院後も内科的に見ていたが、 2回心肺停止となり蘇生。7月7日準緊急手術施行。
手術手技:大動脈弁置換術、手術時間;3時間28分
手術後経過:1日目に抜管し経口摂取を開始したが、心不全、腎不全の内科的治療特に腎不全のコントロールに難渋し術後2ヶ月の現在も入院リハビリ中。

  高齢者の心臓・大血管手術の手術成績は向上しておりCornell大学からの報告では90歳以上の心臓手術の手術死亡は5%と 良好であったとの報告もあります。しかし一般的に自験例のように高齢のため手術が躊躇われ重症化(ショックや重症心不全など)して 緊急手術することが多く、これが手術成績の低下、入院期間の長期化の原因になります。これを避けるため適切な診断と手術適応の決定、 ]手術適応であれば重症化しないうちの手術を考慮する必要があると考えます。その際、本人、家族と十分な話し合いが必要なことは言うまでもありません。

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高安病による大動脈弁置換術後の大動脈基部から弓部の大動脈瘤に対し大動脈基部+弓部置換を施行した一例

高安病における心血管病変は複雑で手術方針、方法に悩む症例があるが、今回高安病による大動脈弁置換術後の大動脈基部から弓部の大動脈瘤に対し大動脈基部+弓部置換を施行した一例を経験したので報告する。
  症例は54歳、男性。45歳、不明熱で発症し高安病と診断。このとき大動脈弁閉鎖不全症と上行大動脈瘤を指摘された。48歳時、大動脈弁閉鎖不全症による心不全のため機械弁による大動脈弁置換術を施行されたが上行大動脈瘤は放置された。 以後定期的に経過観察されたが、上行大動脈瘤が拡大傾向で60mmに近づいたため当科へ紹介された。プレドニン10mg服用中。胸部CTの計測では上行大動脈瘤59mm、大動脈弓部35mm、下行大動脈瘤45mm、右腕頭動脈瘤35mmとそれぞれ拡大していた。 諸検査では血液所見は正常、肺機能、心機能も特に問題は認めなかった。手術は大動脈基部置換術+弓部置換+elephant trunkを施行したが以下のような工夫を行った(図1)。1、大動脈基部置換では人工弁は正常であったため温存、 2、冠動脈再建はボタン状に直接再建、3、弓部吻合はeaves法(図2)、4、将来の下行大動脈瘤再手術に備えて10cmのelephant trunkを留置、5、弓部分枝は4本別々に再建した。これらによって手術時間の短縮が計られ、総手術時間8時間54分、 人工心肺時間3時間54分、脳分離体外循環時間109分であった。術後経過は特に問題なく術後17日目に自宅退院した。術後大動脈MDCT(図3)。術後7ヶ月の現在元気に社会復帰している。
(主旨は第83回日本胸部外科学会北海道地方会にて発表した。)

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